フェルメールと17世紀オランダ絵画展に行く前に!

前回に引き続き今回もオランダのアーティストについて。

テオ・ヤンセン展を紹介したならば、こちらも紹介しないとです!

フェルメールと17世紀オランダ絵画展」

 

今回コロナ禍の中、開催が危ぶまれていた東京展から無事大阪にやってまいります!

まだ大阪展での作品目録が発表されていませんがおおよそ東京展と同じにはなるでしょう。

ということで、先取りとして注目ポイントを私なりにまとめてみます!

無かったらすいません!

 

フェルメールと17世紀のオランダ絵画展。

17世紀のオランダがひとつキーポイントになっていますね。

17世紀のオランダの背景として、オランダの黄金時代であったと共に、ヨーロッパで巻き起こった宗教改革がオランダにも勿論訪れています。

この宗教改革は画家や彫刻家にだけに視点を当てれば恐ろしいほど壊滅的なダメージを与えました。

なぜなら、今までカトリックの時代において画家の最大の収入源であった豪華な宗教画や祭壇画は、プロテスタントにとっては排除するべきものとなってしまった為に一気に活動の幅が狭められてしまったんです。

そして彼らが活路を見出し新しく切り開いたのがジャンル画、いわゆる風俗画です。

そして肖像画も多く描かれるように。肖像画によって人気がでた画家は比較的安定した生活を送れたとか。

今回も展示されるだろうフランス・ハルスなんかも肖像画で一躍名を挙げた一人ですね。

あくまで厳格に多少の盛りも厭わず威厳たっぷりにきらきらと描くのが肖像画だったのが、彼はその人そのものを絶妙にラフな感じで(構図も非対称で衣服もシンプル)内面の良さを自然に浮かびあがらせることのできる革新者でした。

 

そしてヤーコブ・ファン・ライスダール

絵の専門化が進んだ当時のオランダで、彼は風景画の専門でした。

そして彼は自然の風景に自己の感情心情をうまく投影させ溶け込ませることに北方の画家として成功した画家なんです。

ヤーコブ・ファン・ライスダール「城山の前の滝」1665~70年 油彩
ドレスデン国立古典絵画館蔵

実際に見てもらったら分かると思うんですが、はっと目を見張るインパクトというよりかは、じんわりと見ているものの心に伝わり、根ざし、いつまでも印象に残るといった感じですかね。

 

ヤン・ステーンもぜひ注目してほしいです。

彼は農民の素朴な日常を賑やかに切り取ったり、大人数がお祝いの場で盛りあがっているさまをごちゃごちゃさせずにすっきりとまとめ、それでいてそれぞれの人に焦点を当てその人物像を軽やかに浮かびあがらせることができる観察眼優れた画家です。色彩の妙も素晴らしい。

が、今回出展されそうなリストは面白いですね。

ステーンの陽気さとはうって変わって静謐な母子像、そして聖書のシーンを切り取ったハガルの追放とカナの婚礼。後者の方ではステーンの多人物の書き分けを見受けられるかと思います^^

ヤン・ステーン「カナの婚礼」1674~78年 油彩
ドレスデン国立古典絵画館蔵

 

ステーンも紹介したならその義理の父親のヤン・ファン・ホイエンも!

美術史上、空の美しさを発見したのがこの時代のオランダ人画家たち。そして、このホイエンもその一人。

絵の中に空を描く画家たちは今までもいましたが、空を画面上に思い切って大きく配置し、ドラマチックな物語よりも身近にある自然をそのままメインに持ってくる画家はいませんでした。

またそれが人を惹きつけるのだということにも気付いたということですね。

 

 

そして何といってもフェルメール「窓辺で手紙を読む女」ですね。

前回日本にやってきた時とは違う姿で登場です!

しかも修復後の公開は、所蔵のドレスデン国立古典絵画館以外では日本が世界初

ヨハネス・フェルメール「窓辺で手紙を読む女」
左:修復前 右:修復後
ドレスデン国立古典絵画館蔵

フェルメールと17世紀オランダ絵画展 │ 大阪市立美術館

ご存じの方も多いかとは思いますが、X線調査によって一部絵が塗りつぶされていることが過去に判明し、その修復を行っていたんですね。

そしてついに姿を現したキューピッド

これでこの女性が読んでいる手紙の内容はラブレターだということが特定されたんです。

しかもキューピッド仮面を踏んづけています。

仮面欺瞞の象徴。それを愛のキューピッドが踏んでいるということは誠実な愛であることを語っています。

幸あれ!!

 

以前までこれはフェルメール自身によって塗りつぶされたと思われていたんですが、今回の修復作業過程において何と全くの他人が勝手に、しかもフェルメールの死後に塗りつぶしていたことが判明したんです…!

 

フェルメールより人気のあったレンブラントの作品っぽくし、売りやすくする為に誰かが命令を出したようなんですよね…

 

フェルメールは今でこそ超人気の画家ですが、当時はからっきし。

本人は、当初は義母の不動産収入や、宿屋、居酒屋、美術商などの副収入がたんまりあったので、画家としては年に2,3枚じっくりゆっくり描いているだけでやっていけてたんです。

(もはや画家が副業…)

しかし順調な生活も戦争により全ての収入が激減。もちろん絵は売れない。借金に次ぐ借金で破産、しかも子供は11人…。

 

Oh…

 

そんなフェルメールですがやっぱり革新的な画家でした。

どこがー?と言いますと、彼の絵は一目で分かりますよね。まずそれがすごい。

そして、丹念に緻密に描かれたものでありながらその結果生まれる堅さはなく、どっしりとした存在感は無くさずにふんわりと抜け感があるんです。

その両立はなかなかに難しい。奇跡の絵たる所以です!

 

フェルメールの絵は贋作(ニセモノ)が多いんです。

それは、ハン・ファン・メーヘンレンという人物がかなり関わっているともいえるんですが…それは今回置いておいて。

現在真筆(ホンモノ)と判明しているものは約30数点のみ。

まあそりゃ年に2,3枚のペースなら必然的にそうなんですが、とにかくレアなんですね。

しかも贋作事件や盗難事件に遭うことが多く、その内1点(「合奏」)は1990年に盗難に遭ってから未だ行方不明…。

本物を見る機会があるってとてつもない幸運なことなんですよ!

あぁ、フェルメールね。じゃないんですよ!

わかりましたか!フンフン!

 

そしてレンブラントも勿論来日していますね。

「若きサスキアの肖像」このあと奥さんになる方ですね。

レンブラント・ファン・レイン「若きサスキアの肖像」1633年 油彩
ドレスデン国立古典絵画館蔵

「サスキアの肖像」― レンブラント・ファン・レイン | 世界の美術館

彼女は21歳でレンブラントと結婚しますが29歳という若さで亡くなってしまうんです。

レンブラントといえばこの光と影の効果的な描き方ですよね。

この絵においてもその効果が発揮されています。このサスキアの肖像は実際に私もまだ見たことが無いので非常に楽しみな一作です♪

 

私が見たことのあるレンブラントの作品からいくと、彼のその色彩の感覚は独特で、カラバッジョほど強い劇的な感はなく、かといってベラスケスほど明るいわけではない。

背景も漆黒!というよりかは焦げ茶~柔らかな黒、その中にあまり明るすぎることのない色彩を使うことでより幻想的に親近感のあるように浮かび上がってくるように思います。

均一ではない背景の色も、空気の動きや埃の漂いを感じることができるのかなあと。

 

 

 

他にもたくさんの素晴らしい17世紀のオランダを代表する画家の作品がはるばるやってきていますが、今回はこのくらいで…

あとは実際に現地で楽しんでいきましょう~!

皆さんが心に響く絵と出会えますように!

 

そうそう、静物画がたくさん生まれたのもこの時期です。

全ての物や位置が意味深で頭が痛くなってしまうかもしれませんが、大丈夫です。特に意味を見出そうとしなくて結構!

だって彼らは、主題が特に意味のないものでも絵画は素晴らしいものになるんだということを証明しようとして静物画を描きだしたのですからね!

ただ目に見えるものをそのままに描く。

色のついたグラスに光が反射するとどういう風に見えるのか、とかそんな感じです。

静物画は彼らにとっての実験場そのものだったわけです。

と考えると、段々静物画がいきいきとしてきませんか?

日々の生活の中で見過ごして見えていなかった世界を知るきっかけになればいいな^^

 

トドメのように書き足してしまいました。

このくらいと言いつつ長かったですね…

 

 

 

テオ・ヤンセン展 大阪初上陸!

今回はこれから開催されるおすすめを紹介!勝手に!

「テオ・ヤンセン展」です!

ご存じじゃない方も多いかとは思いますが…

テオ・ヤンセンさんはオランダの彫刻家であり、物理学者。

 

そう、今月はオランダがアツい!!

現代のテオ・ヤンセン。そして巨匠フェルメール

両氏の貴重な作品が大阪に集うこの機会はそうそうもう訪れることはないだろう月間になります!フンフン!

 

さてさて。

上記のフライヤーにも載っているこの砂浜に立つ生き物らしきもの。

これがテオ・ヤンセン氏の代表作「ストランドビースト」です!

オランダ語砂浜を意味するstrand生命体を意味するbeestをつなげた彼による造語です。

 

見るからに謎が多いストランドビーストですが、風を帆や羽で受け、体内に設置されたペットボトル(胃袋)に空気を溜め込み(食べ)、そしてなんと歩くのです。

ある比率で構成された脚(プラスチックチューブ)を自在に動かし歩くさまはまさに生命体。ストランドビーストちゃんです。

 

オランダの海面上昇問題を解決するために産みだされたストランドビースト

作者のテオ・ヤンセンが亡くなったとしても、その後も自立して生きていくことを目指しているとか…

 

しかも恐ろしいことに、この緻密な計算の上に成り立つストランドビーストの設計図はなく、すべてテオ・ヤンセン氏の頭の中で計算され組み立てられているそう…

 

アートと科学が融合したこのさまに彼は現代のダ・ヴィンチと呼ばれています。

 

 

大阪初上陸のこの神秘のストランドビースト、絶対見たい!

そしてたくさんの方にも是非体験してもらいたいです。

どういう風に展示されるのかもワクワクです。

 

 

テオ・ヤンセン

風を動力源としてオランダの砂浜を疾駆する「ストランド(砂浜)ビースト(生命体)」。ボディ全体は黄色いプラスチックチューブで造形され、物理工学を基盤としたその動きは生き物を思わせるほどに滑らかで有機的です。それらはオランダのアーティスト、テオ・ヤンセン(1948~)によって故国の海面上昇問題を解決するために生み出されました。作者亡き後も自立して砂浜で生き延びることを目指し、ストランドビーストは歩行、方向転換、危険察知などの機能を備え、さまざまな環境に適応していくためのシステムを獲得していきます。生と死を繰り返し、遺伝子と遺伝情報を受け継ぎながら進化し続けてきた生命体は、芸術と科学という既存のカテゴリーを横断し、新たな可能性を私たちに提示しています。

本展は大阪で初めての開催となり、日本初公開を含む10作品以上を展示します。実際に動く巨大なストランドビーストを体感できるほか、その構造や動きの仕組みを明らかにし、テオ・ヤンセンが創り出す世界の魅力に迫ります。

 

開催日程

2022年7月9日(土)~9月25日(日)

10:00~18:00

大阪南港ATC Gallery

atchall.com

KAAT EXHIBITION 2022 鬼頭健吾展 Lines

横浜の中華街の近くにあるKAAT神奈川芸術劇場にて7回目になる「KAAT EXHIBITION」が開催されていました。

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しかも今回は私が勝手に追っている現代アーティストの鬼頭健吾さんが1か月限定で手掛けているというではありませんか!!

彼にとっても過去最大のインスタレーションだとか。

 

インスタレーションとは、日本語でいうと空間美術というもので、その名の通り、ある空間や場所を丸ごと作品にしてしまうことなんです。

 

 

ということで、横浜に行くしかありません✌

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鬼頭健吾展 Lines!ありました!

外からも鬼頭さんのエッセンスが溢れてますね

 

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劇場入り口の天井の抜けた開放的なアトリウムに色彩が展開されていました。

この下に敷かれたカラフルなカーペットも作品の一部です。

たくさんの人が訪れたのでしょう、足跡が沢山ついて汚れていますがこれもまたアートの血と肉に…

 

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インスタレーションの面白い所は空間自体が作品となっているので360度のあらゆる角度から楽しめることなんです♪

目にも鮮やかな蛍光色(この色彩も鬼頭健吾節炸裂ですね)に塗られた角材が200本、これまたカラフルな靴紐?らしきもので吊るされています。

 

シンプルでいて複雑を極めています。

 

まさに色彩のシャワー!

 

真下からのアングルはちょっとドキッとしますね。

 

一人で怪しい動きを見せながら上へ下へ右へ左へと縦横無尽に探った末に見つけたとっておきのアングルを紹介します!

じゃじゃん!

この2枚は2階から3階へ行くエスカレーターのほぼ3階につく手前から見える景色です^^

ずっとそこにあるのに一瞬しか見れないこの儚さと永続性のせめぎ合い!

少しの角度の違いでこれほどまでに表情を変える面白さといったら!

鼻息フンフンです!

密度の濃淡の美しさがたまらないです!

うぉぉ…!と思わずエスカレーターをおかわりしました。

ご馳走様です。

 

KAATの多面的な白と茶色の壁と黒いエスカレーターの裏側のシャープな感じ

そしてそこに降り注ぐ意志の強いカラフルな雨と、空気や風がやさしく薫るような靴紐のコラボがずっと昔からそこにあるかのように収まっています。

 

鬼頭健吾さんの作品は日常的なものを用いたもので有名で、フラフープシャンプーボトルなどがよく知られているかと思います。

 

皆さんもぜひ今を生き、活動する現代アーティストにも注目してみてください!

私はまだ鬼頭健吾さんにお会いしたことはありませんが、同時代に生きていることが嬉しいです!

 

鬼頭健吾
1977年愛知県生まれ。京都芸術大学大学院教授。2001年名古屋芸術大学絵画科洋画コース卒業後、2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科油画修了。主な個展にハラミュージアムアーク「Maltiple StarⅠ,Ⅱ,Ⅲ」展、グループ展には、森美術館六本木クロッシング2007:未来への脈動」展、国立新美術館「アーティストファイル」展、エルミタージュ美術館「Mono No Aware」展、高松市美術館「ギホウのヒミツ」展、2020年、京都市京セラ美術館にてリニューオープン後、初の展覧会として個展「Full Lightness」が開催された。2008年五島記念文化賞を受賞しニューヨークに1年滞在し、その後ドイツベルリンにて制作活動。フラフープやシャンプーボトルなど、工業製品の現代的なカラフルさと、生命体や宇宙を感じさせるような広がりを融合させた作品で、国内外から高い評価を受ける。
 

 

佐川美術館「バンクシー&ストリートアーティスト展」

本日紹介するのは佐川美術館で開催中のバンクシー&ストリートアーティスト展~時代に抗う表現者の声よ響け」です。

期間は2022年6月12日までです。

 

佐川美術館は、滋賀県を代表する美しい美術館のひとつですね^^

ゲートをくぐると、水の中に浮かぶ大きな屋根が特徴的な美しい建築が出迎えてくれます。

THE シンプルイズベストって感じですね。

佐川美術館 【建築深訪シリーズ】 | 自然とモダンに暮らす家|きなりの家


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こちらは竹中工務店が担当しているそうです。

数々の賞も獲っているのだとか。

水の反映が屋根の内側にうつっていて見た目にも涼やか♪

 

さてさて現在国内では、3つのバンクシー展が開催中という濫立っぷり。

今北海道の札幌ではバンクシー展 天才か反逆者か」

大阪のグランフロントではバンクシーって誰?展」

そしてこちら佐川でのバンクシー&ストリートアーティスト展」

いかにバンクシーが人を惹き付けるかということですよね、すごい…

しかも存命中の現代アーティストでは異例の人気と知名度ですよね。

 

もう皆さん名前はきっと耳にしたことがあるはずのバンクシー

彼はニューヨークのヒップホップ文化の中ダウンタウンにて生まれたグラフィティ(落書き)の流れを汲むストリートアーティストです。

日本でもちらほらトンネルやら繁華街の壁とか、どうやって描いたんっていう所にスプレーで描かれているのを見かけますよね。簡単にいえばアレですね。

 

王冠のマークが有名なバスキアや、ポップな人型やワニのような犬が有名なキース・へリングさらにはスープ缶や、つい先日米アートとすれば最高額の253億円で落札されたモンローが話題となったアンディ・ウォーホルもストリートアーティストです。

 

バンクシーの作品オンリーな展示会ばかりでしたが、こちらではバンクシーを入り口として他のバンクシー以前のストリートアーティスト(タキ183パートワン等)のいわばストリートアーテイストの父と呼ばれるただの落書きとして扱われていたものをアートへと変えた先駆者たちの貴重な作品や、さらにはその次世代となるTVBOYゴッホのセルフィー画像(ゴッホが多分鏡越し?に最新のiPhoneでキメた自撮りをしている絵)やANDREA RAVO MATTONI(アンドレアラヴォマットーニ)の巨匠フェルメール真珠の耳飾りの少女のオマージュが。

そして、そんなストリートアートが日々目まぐるしい進化を遂げる最中に登場したのがバンクシーです。

これまでの先代たちの革新的な活動に影響を受け、自らの表現様式を確立していく様がわかるよう展示が進みます。

 

彼は、それまでのグラフィティの活動だけではなく、自らがディズマランド(簡単にいうと世紀末のディズニーランド)といったテーマパークを企画したり、メッセージ性抜群のCDジャケットの制作をしたアートワーク、そしてパレスチナのベツラヘムにあるバンクシーがオープンした世界一眺めの悪いホテルと名乗っているウォールドオフホテルにまつわる作品も。こちらはイスラエルが建設した分離壁の真正面に建っているんです…。

それから、大量消費の世の中に疑問を投げかける作品や、反戦や権力への抵抗を込めた有名な作品の数々も展示されていました。

 

ぱっと見はキャッチーでポップにも見えるバンクシーの作品。

ですが、そこには人々が心のどこかでは分かっているのに見て見ぬ振りや、先延ばしにしがちな暗い問題への批判や風刺が皮肉なほどに込められています。

 

覆面アーティストとしてミステリアスな部分も世界中の興味を惹き付けている要因ではもちろんあると思いますし、そして日本では特に不良文化といわれがちなストリートアートを展覧会を開けば老若男女が訪れるこの盛況ぶりにまで芸術分野として確立させ、これからの時代を担う人たちを先導し、長いものに巻かれずにしっかりテメェの頭で考えて行動しろ!といった喝を浴びさせることができる不思議な魅力。もはや魔力!

 

ストリートアートって?グラフィティアート?みたいな方はぜひぜひこちらの展覧会を訪れてみてはどうでしょうか。

こんなにも自由で、表現技法が様々にあるんだと驚きが得られるかと!

そしてここまでのストリートアートの歴史も辿ることができます。

 

なお、こちらは完全予約制となっておりますので、事前のご予約は忘れずに!

www.sagawa-artmuseum.or.jp

 

なので中では比較的ゆったりと観ることができました!

 

 

 

 

【続き】神坂雪佳 つながる琳派スピリット

お待たせしすぎたかもしれません

前回に引き続き細見美術館での「神坂雪佳 つながる琳派展」の続きになります!

 

さてさて今回は図案(デザイン)家としての雪佳についてです。

30代にはすでに京都にて図案家として重要な役割を担っていた雪佳

特に明治30年代あたりに出版された図案集は神坂雪佳を語る上では欠かすことのできないものばかりです!

 

 神坂雪佳「染織図案 海路」1902年 細見美術館

こちらの海路グラスゴー万博への道中に船から見た波の様子を見ていて思いついた図案集だそう。グラスゴーもびっくりよ。

神坂雪佳「滑稽図案」1903年 芸艸堂蔵

 

私が特に好きな滑稽シリーズ!

右の手が空に向かってあげられているデザインなのですが、その横に書かれている字、読めますか?

「宝の山式陶器 佛国セーブル製陶器 カネホシー氏考案」

カネホシーさん!笑 硬貨に手を伸ばしていたんですね(笑)

こんな感じでぱっと見はおしゃれなものばかりなんですが、よく見るとダジャレや雪佳の遊び心というかもはやいたずら心が込められた図案がまとめられたものです。

他にも、ワンコがフンをしているのを後ろで他のワンコがそのフンのにおいを嗅いでいるのがパターン化された可愛い図案も…(笑)

ぜひ見てほしい!

神坂雪佳「蝶千種」1904年 芸艸堂蔵

こちらも有名な蝶千種

全50図からなる華憐な蝶だけの図案集です。

どれもこれも美しく驚かされるものばかりです。

神坂雪佳(図案)神坂祐吉(作)「波に松喰鶴図卓」大正末~昭和初期 
京都国立近代美術館

神坂兄弟による共同作品です。

琳派の世界でも尾形光琳尾形乾山の尾形兄弟による共作が有名ですが、こちらもそれを彷彿とさせる兄弟ですね^^

これもぜひ実際に現物を見ていただきたい美しさです…!

 

そして最も有名な図案集「ちく佐」「百々世草」

こちらはどちらも芸艸堂(ウンソウドウ)が所蔵しているものです。

まず芸艸堂さんについて少し。

こちらは神坂雪佳の図案集をほぼ手掛けた京都市中京区にある出版社で、現在日本で唯一の木版手刷りによる美術書を出版している貴重なところなのです!ヒィ!

ちなみにこの芸艸堂という名前はなんと富岡鉄斎が名付けたそう!

彼は幕末から大正に活躍した文人画家で、水墨画にして油絵のような濃厚さを感じさせる絵が有名です。

日本最後の文人ともいわれているのだとか。

 

そしてこの芸艸堂さんには貴重な版木(版画を作る時に用いる字や画を木に彫ったもの)がたくさん保存されてあり、葛飾北斎若冲の版木もあるのだそう。

日本の美術を守り継承しておられる素晴らしいところなのです!

ありがとうが溢れちゃいますね!

www.unsodo.net

 

そして「ちく佐」です。

3冊に分かれていて、1冊目2冊目は日本の伝統的なモチーフが多く波の表現が豊かな「加茂川」なんておぉ…っと思わず声が漏れてしまいました。

その後のお客さんたちも皆、おぉ…っと同じ声出されてました(笑)

3冊目は一気にモダンな香りがする内容に。

背景はべたっと塗られた色で区切られており、そこに白抜きされた植物のモチーフが美しく配されています。これがまた見飽きないんです。

嵯峨本好きは特に必見!

 

「百々世草」雪佳の集大成ともいうべき3冊にわたる図案集です。

タイトルのももよ草はその後菊を表す語となります。

ちなみにこちらの題箋は富岡鉄斎が書いたそう。

先ほど紹介した芸艸堂には「百々世草」原画があるんです!

しかもそれが今展では見れてしまうのです!!

 

琳派らしい画題や手法も盛り込まれており、いかにそれらを雪佳が自分のものにし、そして昇華させたかがひしひしと伝わってきて、こちらもいつまでも見ていたいと思う作品たちばかりです。

さらには、この中の「八つ橋」がなんと高級ブランドのエルメスの雑誌「LE MONDE HERMESの表紙を飾りました!

しかも2001年にです!今なお世界の一流たちをも惚れさせる神坂雪佳たるや。

↓ぜひこちらで見てみて下さい♪

神坂雪佳 – 芸艸堂

 

 

雪佳が図案を担当し、清水六兵衛作の「水の図向付皿」

神坂雪佳(図案)4代5代 清水六兵衛(作)「水の図向付皿」1920年 個人蔵

左はこの皿に絵付けするための原案になります。

お皿の形も波打っていて楽しい作品です♪

なんと複製品ですがミュージアムショップに売られていました!

 

 

最後は雪佳晩年の図案集「うた絵」

これも大好きですね。ほっと力が抜けた軽やかさと静かな美しさがあります。

古今和歌集から二十五首を選び、それを芦手絵といわれる芦や水鳥や草花を仮名に見立てて絵の中に溶け込ませる手法で描かれています。

芦手絵は、平安時代に流行った画風です。

 

日本人のルーツを知る展覧会でもあるなあと。

日本人でよかった!って思えます。

ぜひぜひ、まだ行っておられない方は行ってみて下さいね!

 

では次は、佐川美術館で絶賛開催中のバンクシーバンクシー&ストリートアーティスト展~時代に抗う表現者の声よ響け~」について書こうと思います♪

 

 

お付き合いありがとうございました!

 

 

 

 

 

細見美術館「神坂雪佳 つながる琳派スピリット」

京都の東山に位置する細見美術館では現在、

「神坂雪佳 琳派展22 つながる琳派スピリット」が開催中です!

2022/4/23ー6/19

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この辺りは名だたる美術館がひしめき合い、近くには平安神宮京都市動物園もある言わずと知れた観光地ですね。

その中でも私は細見美術館が大好きで、定期的に訪れています^^

なんといってもここのフライヤーのデザインがいつも素敵でして。

過去の展覧会のものを見ていくのも楽しいです♪

 

そして今回の神坂雪佳

細見さんの得意分野ですね。

ここの琳派若冲のコレクションは素晴らしいのひと言に尽きます!

細見家3代に渡ってコレクションされてきた美術品は、日本の美術工芸のほぼすべての時代分野が網羅されています。

 

明治時代から昭和にかけて活躍した神坂雪佳

本阿弥光悦俵屋宗達尾形光琳ら江戸時代に華開いた琳派の作風に魅了され、そしてそれらを新しい時代に生きるデザインとしてモダンに仕上げたのです。まさに近代デザインの先駆者です。

 

もともとは、かつて円山応挙などがいた写実的な絵を得意とする四条派にて学んでいたそうです。

その下地があってこそ、琳派が得意とする抽象的な表現が自由になるんでしょうね。

 

イギリスのグラスゴー国際博覧会の視察として欧州にも渡りますが、そこで日本古来のデザイン性の高さに改めて気付いたそうです。

そこからはもう琳派琳派琳派ー💨

光琳の再来とまでいわれたそう…

 

ここまで書いて私もある事に気付きました。

私、やっぱり琳派が1番好きですね。

キュン度指数が段違いで高まるのは琳派ですね!!はい!

 

江戸初期に書画(寛永の三筆の一人)、工芸、茶の湯などの分野で名を馳せた本阿弥光悦

もともと本阿弥家は刀剣の鑑定、研磨、浄拭を家業とする名家で、光悦はそこの長男でした。

 

鷹峯に職人達や本阿弥一族などを呼び寄せて、いわゆる芸術村(光悦村)をつくりました。

その様子を雪佳が思いを馳せて描いたものがこちら

神坂雪佳「光悦村図」昭和初期 個人蔵

全体の左側の一部になりますが、ここで外の様子を見上げているのが光悦だそうです。

蒔絵師が仕事に精を出している様子も描かれていますね^^

右側にも他の職人達が活気よく働いている様子があってそこも是非実際に見て欲しいです。

雪佳も実際に見た訳じゃないはずですが、鷹峯の様子がいきいきと伝わる作品です。

 

その横には光悦俵屋宗達のコラボ作品

「忍草下絵和歌巻断簡」

後期は「月梅下絵和歌書扇面」に変わります。

どちらも天才と天才が書と画でコラボする夢のようなまさにドリームマッチ作品ですね!

宗達が絵を描き、光悦が書をしたためるこの合作シリーズは、ジャズのセッションを彷彿とさせるなあといつも思います。

2人が楽しみながら作品に取り組んでいたのがこんなにも今もなお伝わってくる作品ってそうそう無いです。

 

そして我らが兄貴、尾形光琳の作品「柳図香包」も。

もともと香木を包むための紙に描かれたものを表装したもので、しっかり折り目がついてました。

まだいい香りしそうだな〜〜

 

しかし!今回は神坂雪佳がメイン!

他にも中村芳中酒井抱一鈴木基一などなどヨダレものの作品達がありましたが、先代の巨匠たちはここらへんにしておいて…

 

今回のメインビジュアルにもなっている「金魚玉図」

昔はガラス玉の中に金魚をいれて涼を楽しむものがあったそうで、それを描いたものですが構図がもう今見ても新しい!

神坂雪佳「金魚玉図」明治末期 細見美術館

真っ直ぐに見つめてくる金魚。

ガラス玉の中の金魚が光背(いわゆる後光)を背負っているようにも見え、神々しく達観した顔にもみえます(笑)

その模様は琳派たらし込みの技法が使われており、空間の取り方も絶妙。さすが雪佳

家に飾りたいです。

 

神坂雪佳「杜若図屏風」大正末~昭和初期 二曲一双 個人蔵

こちらはもう尾形光琳のあの名作「燕子花図」根津美術館蔵)のオマージュですね。

光琳ほどパターン化されることなくより自然に近いかなあ。

そして金地も落ち着いたマットな色合い。

アクセントに白の杜若(カキツバタ)を配しているところが雪佳のオシャレなところですね♪

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こちら展示室を移る外の階段の踊り場に飾ってある狗児図。もちろんこちらは複製画!

宗達応挙の描く犬のエッセンスも感じられます。

かたつむりを見つめている子犬の様子が愛らしすぎる!

 

神坂雪佳「四季草花図」大正期 細見美術館

これも非常に素晴らしかった!

琳派が得意とした画題に真っ向から挑戦した雪佳の気合とリスペクトが表れています。

デフォルメされた四季折々の花々。実際にはありえない光景ですが違和感なくすっきりと調和させているこの技…!好きだわー--

そして、木の幹や土の部分にもたらし込みが見られますね^^

 

紹介したい作品が多すぎる…

 

ちょっと長くなってきましたかね…

図案にうつった雪佳については次回の投稿にしたいと思います^^

エルメスの雑誌「LE' MONDED' HERMESの表紙にも起用された傑作の図案集「百々世草」「ちく佐」も紹介したいと思います!

そして、尾形兄弟を彷彿とさせる神坂兄弟の陶芸作品のついても^^

 

www.emuseum.or.jp

 

大阪歴史博物館「絶景!滑稽!なにわ百景!」特別展

大阪歴史博物館で現在開催されている特別展は

「〜浮世絵師たちが描く〜絶景!滑稽!なにわ百景!」

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面白そうな匂いはプンプンしてたんですが、期待以上でした!

 

大阪歴史博物館でタイトルにもなにわを謳ってるだけあって、大阪が舞台の浮世絵たちがズラリ

しかし今回の浮世絵は絶景!滑稽!なものに焦点が当てられているんです。

 

初めは、北斎広重らによる真面目な大阪の名所絵などから始まります。

そして奥へ進むにつれ歌川芳梅耳鳥斎による滑稽シリーズが…笑

 

歌川芳梅・歌川芳豊「桜ノ宮~滑稽浪花名所~」幕末期 中判錦絵
大阪歴史博物館


今展の看板絵でもあるこちら。なかなか激しい場面です(笑)

滑稽シリーズの解説文はなぜか突然コテコテの関西弁で書かれていてクスッとさせてきます。

こちらの場面は、船から陸に上がる時に渡る板橋でバランスを崩した女性がひっくり返ってしまい、後ろの男性はこの数秒後に多分ばっしゃーん。

そして前に立っていた男性の顎に板橋が華麗にアッパーカット!(解説文でもアッパーカットと書かれていました(笑))脱げた下駄も空を舞っています。

思わず見ているこちらも声が出ちゃいそうな一枚。

歌川芳梅「生玉~滑稽浪花名所~」中判錦絵

こちらは、お茶屋で目隠しして女の子と楽しくわちゃわちゃ追いかけっこしていた最中、掴んだのがお侍さん…!!この無礼者っ!にパニック起こしてご馳走が入ったお重箱もどんがらがっしゃん!

いやぁ…羽目は外しすぎちゃあいけません!

 

にしても背景の景色の美しさと人物の何とも言えない動きのある表情が絶妙にマッチしていて江戸時代の大阪の日常の一コマって感じが強く感じられますよね。

 

耳鳥斎「地獄図巻」1793年 大阪歴史博物館

さあさあやってまいりました耳鳥斎(ニチョウサイ)

こちらはあらゆる職業にちなんだ26個の地獄が皮肉たっぷりの笑いを込められて書かれているうちの1つです。

ちなみにこちらは歌舞伎役者の地獄です。

役者だった彼らが鬼に大きな大根を口にねじ込められています。

…役者、大根…そう、大根役者…!!!!ヒィ!

 

その他にもところてんの地獄やら、そしてこれは飴屋の地獄。

耳鳥斎「地獄図巻」1793年 大阪歴史博物館

飴のように引き延ばされて丸められてます。たまったもんじゃない!

前期後期でみれる地獄が変わるそうです。

こんなことにならないように生きていかねばですね。うむ。

 

忘れちゃいけないのがなにわのマルチタレント、暁鐘成

学者であり、芸術家であり、商人であり、プロデューサー!

天保山名所図会」は、今でいう旅行ガイド本みたいなもので、さらにその広告まで自ら作っちゃってるんですね。

この時代にも広告なるものがあったとは…

あとは和漢三才図会のパロディとして無飽三財図会

これまた面白い皮肉がたっぷりでした!

吉原に通うお客さんのタイプ分けを天文を測る六分儀に例えて書かれていたり、須弥山を花魁の後ろ姿にたとえていたり。

↓こちらの2編1と初編3です。

風俗図会データベース

 

 

浮世絵って地味…つまらなさそう…って思っている方も多いかとは思いますが、そんなことは全くなくて老若男女楽しめるものだと思いますよ♪

 

江戸時代の人々が何を見て何を笑っていたのか、より身近に日常の一コマを垣間見れる展示でした。

 

www.mus-his.city.osaka.jp

期間 2022年4月23日~6月5日
一般 1000円
高校・大学生 700円
休館日は火曜日